ヘリコプターは空中でさまざまな動きをすることができます。通常の飛行機と異なり、後ろに進むのも空中で止まるのも自由自在です。その魅力に惹かれ、実際に操縦をしてみたいと思う人も多いのではないでしょうか。しかし、その免許の取得方法は一般的にあまり知られていません。
また、ヘリコプターが操縦できるようになれば、高収入の職に就ける可能性もあるのです。 そこで、当サイトでは、「ヘリコプター免許を取得するためには具体的に何をすればよいのか。」について解説をしていきます。
目次
ヘリコプター免許の種類と違い
ヘリコプターの免許は国土交通省が管轄する国家資格です。資格の名称で言えば回転翼航空機に該当し、パイロット免許の種類は以下の3つがあります。
- 自家用操縦士
- 事業用操縦士
- 定期運送用操縦士
自家用操縦士は自動車で言えば第一種運転免許、事業用操縦士は第二種運転免許にあたります。
定期運送用操縦士は操縦士の最上位で、操縦に2人以上を要する機種に必要となります。
さらにヘリコプターの免許は、エンジンのタイプがピストンかタービンか、離着陸が陸上のみか水上でも可能かで等級が分かれます。他の航空機の場合は、エンジンが単発か双発かという等級もありますが、ヘリコプターの場合は多発しかないのでエンジン数で等級は分かれていません。
自家用操縦士免許
自家用操縦士免許は、これは自動車に例えると普通自動車第一種免許にあたります。
自家用操縦士免許を取得すればプライベートでヘリコプターを操縦することができます。個人的な飛行のみが許可される免許のため、他者から報酬を受け取る代わりにヘリコプターを操縦するという航行はできません。
つまり、自家用操縦士の免許を取得していても、航空会社にパイロットとして入社することはできないというわけです。
事業用操縦士免許
一方、事業用操縦免許は自動車の第二種運転免許のようなものです。
事業用操縦士免許を取得すれば、自家用操縦士が許可された飛行内容に加えて、各種事業で使用されるヘリコプターを操縦できるようになります。
事業用操縦免許があれば、職業としてのパイロットの資格を得ることができます。代表的な就職先として挙げられるのが、海上保安庁や国土交通省のパイロットです。
また、民間であればドクターヘリや物資飛行、報道飛行、遊覧飛行といったパイロットの仕事があります。
ただし、いきなり事業用操縦免許を取得することはできず、最初に自家用操縦士免許を取得し、それから事業用操縦士になるための訓練を行うという流れとなります。この辺りの仕組みは自動車免許と同じだと考えればよいでしょう。
自家用操縦士免許取得の流れ
自家用操縦士の免許は17才以上の方が取得できます。免許取得の際には、試験のほかに身体検査等も細密に行われます。
自家用操縦士の資格を取得するためには、年2回行われる国家試験に合格しなければなりません。
身体検査の受診
まず、操縦練習許可書を国土交通省に提出し、続いて航空身体検査と呼ばれる検査を行います。 以下の4科が検査の範囲です。
- 内科
- 眼科
- 耳鼻咽喉科
- 精神神経科
検査項目の中でも特に問題になりそうなのが視力です。検査をクリアするには矯正視力各眼0.7以上が必要となります。ただし、レーザー手術による矯正歴があると不合格になってしまいます。したがって、操縦士の資格取得を目指しているのであれば、うっかりレーザー手術を受けないように気をつけたほうがいいでしょう。
視力について更に詳しく知りたい方は、『パイロットに必要な視力』でも細かく説明していますので読んでみてください。
飛行経歴
航空身体検査で問題がなければ、次はパイロットスクールに入って訓練を行うのが一般的な流れです。
スクールでのプログラムをクリアするのに要する時間は座学で100時間程度です。
免許を取得するためには、国が行っている学科試験と実地試験に合格する必要があります。しかし、試験を受けるためにはまず、以下の飛行経歴を持つことが必須です。
- ヘリコプターの飛行訓練で40時間以上の総飛行時間
- 総飛行時間の中には10時間以上の単独飛行
- 5時間以上の単独操縦による野外飛行
- 夜間における離陸・着陸および航法の実施を含む20時間以上の同乗教育飛行
- 野外飛行の際、出発地点から180km以上の飛行と中間地点で2回以上の生地着陸
- 「オートローテーション着陸」訓練が最低1回
これは技量によっても大きく左右され、実際のクリア時間は40~100時間程度とかなりの幅があります。
「航空特殊無線技士」の資格取得
航空特殊無線技士は、日本無線協会が6、10、2月の年3回実施している試験に合格するか、不定期に開かれる養成課程を修了すると取得できます。
受験本番
スクールで規定のプログラムをすべてクリアすると、いよいよ受験本番です。
試験は最初に学科試験と航空無線試験があり、それに合格すると口述試験と実技試験に移ります。
そして、それらすべてに合格すると、 自家用操縦士技能証明書が交付され、自家用ヘリコプターが操縦できるようになります。
事業用操縦士免許取得の流れ
事業用操縦士の免許は18才以上の方が取得できます。しかし、自家用操縦士免許同様、取得の際には、試験のほかに身体検査等も細かく行われます。
「航空無線通信士」または「航空特殊無線技士」の資格取得
事業用操縦士免許を取得するには、先に航空無線の資格を取らなければなりません。こちらも国家資格であり、無線工学、法規、英語の学科試験に加え、電気通信術の実技試験があります。航空無線の資格が取得できたら、操縦練習許可書を国土交通省に申請します。
「航空無線通信士」は、運送事業の飛行に携わるときに必要な資格です。「航空無線通信士」は、試験に合格するか養成課程を修了すると取得できます。なお、「航空無線通信士」の資格を有していれば、「航空特殊無線技士」の資格は必要ありません。
身体検査の受診
第1種航空身体検査は指定された医療施設で受診します。各眼で必要な視力は裸眼または矯正で0.7以上、両眼でも基準が設けられており、裸眼または矯正で1.0以上なければいけません。年に1回の更新となるので毎年検査を受けましょう。
飛行経歴
免許取得に必要な試験を受けるためにはまず、以下の飛行経歴を満たす必要があります。
- 自家用操縦士の免許の取得
- 飛行経歴は150時間以上の総飛行時間(自家用操縦士の免許を取得したときの飛行時間も含める)
- 35時間以上の機長としての飛行
- 10時間以上の機長としての野外飛行
- 野外飛行の際、出発地点から300km以上の飛行と中間地点で2回以上の生地着陸
- 機長としての5回以上の離陸および着陸を含む5時間以上の夜間の飛行
- 10時間以上の計器飛行(航空機の位置、高度、進路などの測定を機体の計器のみを頼りに行う飛行)
- オートローテーション着陸が最低1回
これらをクリアし、学科試験や口述試験・実技試験に合格すると日本事業用操縦士技能証明書が交付されることになります。
ヘリコプター操縦士の所得
気になる所得ですが、プロのヘリコプター操縦士はかなりの高収入です。
具体的な数字はどこに就職するかによっても変わってきますが、800~1000万円程度の年収は十分期待できます。それでも需要の割に担い手は少なく、高齢化が目立つのが実情です。
したがって、ヘリコプターの操縦士として働きたいというのであれば、チャンスは大いにあるということになります。
定期運送用操縦士免許取得の流れ
定期運送用操縦士の免許があれば、操縦の際に機長と副操縦士の2人のパイロットが必要なヘリコプターを操縦することができます。このランクの資格は航空会社で機長を務める人が取得している免許になります。
そのため個人で取得することはまずなく、勤務航空関係の会社に就業して副操縦士としてを重ねたあとで、会社を通して受験するのが通常となります。
定期運送用操縦士の免許は21才から取得可能です。定期運送用操縦士になるためにも、必要経歴があります。
飛行経歴
- 事業用操縦士の免許の取得
- 総飛行時間1000時間以上の飛行経歴
- 100時間以上の野外飛行を含む250時間以上の機長としての飛行と200時間以上の野外飛行
- 50時間以上の夜間の飛行と30時間以上の計器飛行
- 「第1種航空身体検査」を毎年受診
自家用操縦士や事業用操縦士とは異なり、離着陸に関する条項はありません。
また、これらの飛行経歴も、自家用操縦士と事業用操縦士の免許を取得するために要した時間を充てることができます。
(引用:パイロットになるには – 国土交通省)
数千万円単位のお金が必要な場合も!免許取得費用とその対策
ヘリコプターの免許取得を目指す際に最大の障害となるのは、学力の問題でも操縦技術でもなく、実はお金です。
『ヘリコプター免許取得にかかる費用』では更に詳しく説明していますが、パイロットスクールの費用の相場は400万円以上といわれています。しかも、1度で合格できればまだよいのですが、何度もチャレンジするとなると、数千万円単位のお金が消えてしまったということにもなりかねません。ヘリコプターのパイロットは高給取りなのに、担い手が少ないというのはこうしたところにも原因があるわけです。
各航空会社ではこの問題を解決するために奨学金制度を設けるようになりました。とはいっても、奨学金は返済しなければならないので多額の借金を背負う形となりますし、そもそも、選抜試験をクリアして奨学金を受け取ることができるのは数名しかいないというのがネックです。 そこで、他の選択肢として、海外のパイロットスクールに通うという手があります。
アメリカなどには安いパイロットスクールがあるため、そういったところを利用するとかなり割安になります。英語が苦手だから無理だと思う人もいるかもしれませんが、操縦訓練中に使う英語は管制用語などの限られたものだけであり、努力次第でなんとかなるものです。そして、アメリカで資格を取得したならば、あとは帰国して日本の資格に書き換えればよいだけです。 ただ、国内と海外では法律が異なるため、法規の試験だけは日本で受験をし直す必要があります。なお、海外で取得した免許の書き換えが可能なのは自家用免許だけであり、事業用免許は不可となっているので注意が必要です。
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・ヘリコプター免許をアメリカ(海外)で取得しよう
ヘリコプターの免許に更新はあるの?
ヘリコプターの免許には、自動車と同じく更新時期が設けられているのでしょうか?
すべての航空機の免許には取得後、2年に1回以上の頻度で「特定操縦技能審査」という審査を受けて合格しなければなりません。審査の内容は離着陸時の操縦や、非常時の操縦に関する技能や知識などが問われます。
しかし、この審査は免許の更新目的で行われるものではありません。あくまでパイロットとして安全に活動できるかを確認するための審査なので、この審査に不合格になったからといって免許が失効するわけではないのです。
不合格になると飛行は禁止されますが、再審査を受けて合格すれば再び機体を操縦することができます。
合格のための重要ポイント!パイロットスクールの選び方
パイロットスクールの費用はかなり高額になるため、できるなら短い期間で合格したいものです。そのためにはスクール選びが重要になってきます。 まず、国内のスクールに通う場合はなるべく自宅から近い方が無難です。あまり遠いと、通うのが大変なので勉強に集中できなくなる恐れがあります。
また、安全性の高さについてもチェックが必要です。ヘリコプターの操縦は一歩間違うと大事故につながりかねないため、入念な整備や安全飛行に取り組んでいるスクールを選ぶようにしましょう。
さらに、合格率の高さも重要です。
少しでも早く合格したいのなら、合格率の高いスクールに通うべきです。
就職のために事業用操縦士免許の取得を目指している場合は、当然、就職率の高さも問題になってきます。もし、就職率のデータを見せてくれない、ネットを見ても掲載していないというスクールがあれば、そこは避けた方がよいでしょう。
次に、海外のスクールを探す場合ですが、最初にいくつかの斡旋会社に資料請求をして費用の比較をします。料金はたいていパック料金としてまとめて表示してあるので、その中身を確認することが大切です。渡航費、訓練費、宿泊費、教材費、現地の交通費など、詳細を調べて実質料金が安いのはどれかを判断していきましょう。 しかし、いくら料金が安くても期間内にスクールを卒業できなければ意味はありません。したがって、スケジュールに無理がないかを確認するのも必須です。
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自分に合った方法でヘリコプターの免許取得を目指そう!
ヘリコプターの免許には自家用操縦士免許と事業用操縦士免許の2種類があります。そして、後者を取得すれば、プロのパイロットとして高年収の職に就くことができるようになります。 一方で、最大のネックとなるのがパイロットスクールに通うための高額な費用です。しかし、それも、海外のスクールや奨学金を利用するなどして安く抑えることは可能です。自分に合った方法を選択し、免許の取得を目指していきましょう。
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