パイロットに必要な視力

パイロットになるには視力が必要であることをご存知でしょうか?
もちろん聴力など他の身体能力も大事なのですが、航空機を運用する際にもっとも重要なのは視機能です。
ここまで読むと「目が悪いとパイロットにはなれない」と言っているように思えるかもしれませんが、目が悪くても免許を取ることはできます。
それでは視力がどうして条件を満たすために必要なのか、目が悪くてもパイロットになることはできるのか、お答えします。

パイロットに視力が必要な理由

パイロットになるためになぜ視力が必要なのかというと、例えば着陸時に滑走路を視認したり、飛行中などに他機を確認したりと何かと目を使うからです。そもそも、何も見ないで機体を操縦することはできません。確認を怠るとすぐに大事故が起きてしまいます。
こうしたトラブルは命に関わるために、操縦士にとって非常に責任重大なものです。
なのでそうした事故を起こさないために、パイロットになるにはある程度は視力が良くないといけないのです。

目が悪い=免許を取れないわけではない

視力検査とはいえ、視力の悪い人が全員パイロットになれない、ということではありません。
国の航空身体検査基準では、パイロットになる場合には各眼が裸眼で0.7以上及び両眼で1.0以上の遠見視力を有する、又は各眼について、各レンズの屈折度が(±)8ジオプトリーを超えない範囲の常用眼鏡により0.7以上かつ両眼で1.0以上に矯正することができることが定められています。このどちらかの条件を満たさなければ免許を取得することができない、ということです。

ジオプトリーと聞いてピンと来ない方もいるかもしれません。ざっと説明すると、ジオプトリーというのはレンズの屈折力の単位のことです。1メートルを焦点距離で除した値で、主に眼鏡の度を表すのに用いられます。まとめるとレンズの強さのことですね。
つまり、上記の条件では左右の視力差が大きすぎるとパイロットになることが難しいと書かれていることになります。

さらに、屈折矯正手術(角膜前面放射状切開手術、PRK等)の既往歴がないことやオルソケラトロジー(コンタクトレンズによる屈折矯正術)による矯正を行っていないことが求められる場合もあります。

レーシック手術を受けた場合はOK? NG?

さて、今までは裸眼や眼鏡・コンタクトなどの矯正器具を着用時についての説明でしたが、レーシック手術を受けた場合には免許は取れるのでしょうか。

レーシック手術とは、角膜の曲率を変えることにより視力を矯正する手術のことです。近視などの屈折異常に悩む方が目を治療する方法の一種として利用していますね。

遠見視力の不適合状態の項目中に屈折矯正手術の既往歴のあるものと記載されているために、レーシック手術などで視力を矯正してもパイロットにはなれないのでは? と不安になりますが、手術を受けたからといって不適合というわけではないんです。なので視力について不安な人の中には、それなら免許を取得しようとする前にレーシック手術を受けておこう、と考える方もいるかもしれません。

ただし、そういった矯正手術については未だにトラブルとなることが多くあり、さらには将来的に視力がどこまで維持できるのかという不安要素が多々あります。ですので、施術をお考えの場合は眼科の専門医によく相談した上で検討してみてください。

ちなみにパイロットの予備校では平成28年度の受験からレーシックによる屈折矯正手術が認められるようになりました。既往歴のある人は願書提出時に手術歴を記入し、一次試験合格後は眼科専門医が作成した診断書の提出が必要になります。術後6ヶ月以降を経過している必要があり、手術記録を含む臨床経過、視機能の安定、視力の日内変動(同日の朝昼晩3回以上の測定結果)、コントラスト感度、グレアテスト、角膜形状解析の計6つの診断書が必要です。
また、各航空会社がパイロット採用時に定める基準は異なるため充分に注意してください。

「目が良い」だけでもダメ

視力パイロットの視力について説明しましたが、視力には種類があります。
実は、今までお答えしていたのは遠見視力という視機能の一種のことなのです。
遠見視力というのは、遮眼子で片目を隠して視力検査をすることと特段変わったことはありません。要は、遠くをどれだけ鮮明に見れるか、という能力になります。一般的に「目が良い・悪い」と考える際に参考にしているのが遠見視力なんです。なので目が良いだけでパイロットになれるかというと、そうではないんですね。

実際に免許を取得するには、遠見視力以外の項目もクリアしなければなりません。遠見視力、中距離視力、近見視力、両眼視機能、視野、眼球運動、色覚の計7項目が必要なんです。これら全ての項目を達成しないと必要な資格を取得することができないので、中々厳しいです。夜間視力や調整力も必要になってきます。

免許取得後も続く検査

代表的なパイロットの資格は事業用操縦士・自家用操縦士・点定期運送用操縦士の三つが存在し、操縦できる範囲などが各資格ごとに定められています。ヘリコプターのパイロットの場合は事業用操縦士の資格が必要ですね。この資格の種類について更に詳しく知りたい方は『パイロット免許の種類』をご覧ください。ちなみに学歴は高等学校卒業以上なのでそこまで重要視しなくても大丈夫です。

ところで、パイロットになるには資格を取得する際航空身体検査という全世界のパイロットに義務付けられている検査を受けなければなりません。基準は各国によって異なるため日本においては国土交通省が管轄しているのですが、実はこの検査、免許を取った後も受け続けなければならないんです。
半年又は一年に一度、必ず航空身体検査を受けるように定められているので、合格すると証明書が発行されます。パイロットを続けたい場合、航空身体検査に合格し、健康体の証明を維持する必要があるんです。安全に飛行するためには必要不可欠な証明です。視力だけでなく、全ての項目をクリアしなければならないのでかなりハードです。

では、合格を維持できなければどうなるのか。その場合、航空業務を行うことができなくなります。
一度失敗すれば取り返しのつかないことになってしまうため、厳しく検査しなければならないのは仕方のないことです。常に細心の注意を払って業務に取り組まなければならないということですね。ヘリコプター操縦士になるにはとにかく実地訓練や専門知識が必要になるので、しっかりと勉強をしなければいけません。英語もできると得ですよ。

ヘリコプターパイロットは需要がある?


現代において、ヘリコプターの活躍の場は非常に多くなっています。警察航空隊や消防防災ヘリ、海上保安庁ヘリや民間のドクターヘリなどの増強が進められているのが何よりの証拠ですね。しかしそれに対してヘリコプターの有資格操縦士が不足しているため、ヘリの多い中数少ないパイロットの方々が求められているのが現状です。なので、一度資格を取得できれば就職はさほど難しいことではないでしょう。

訓練費用が高いので、プロのヘリコプター操縦士を養成するために奨学金制度を導入している航空会社もあります。合格者の資格取得のために掛かった訓練費等を貸与する形ですね。また、ローンを組んでパイロットになる方もいます。ヘリコプター操縦士の年収はおよそ約400万からの方が多いので、奨学金の返済もスムーズに終わるかもしれません。かなり需要のある職業です。

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ヘリコプター免許取得にかかる費用

まとめ・パイロットになるために

ヘリコプター免許を取得するのには最低でも矯正視力が0.7以上必要で、免許取得後も半年又は一年に一度、必ず航空身体検査検査を受けて合格を維持しなければならないことや、資格は事業用操縦士、学歴は高等学校卒業以上が必要ということがわかりました。
訓練を何年も重ねていくためとても大変ですが、パイロットとなった時の感動は言葉では言い表せないほどでしょう。空を飛んで日本全国に行けるのが何よりの魅力ですね。